紅葉する東北の歴史…約900年前から残る南陽市熊野大社の大銀杏!

こんばんは。米沢藩・小山道場講師の小山です。

山形県置賜地方の紅葉が山から里に降りてきました。神社仏閣などの観光地の樹木の紅葉が見頃です。900年以上前、平安時代後期から残る大銀杏の紅葉を見に、“東北の伊勢”と呼ばれる熊野大社に行ってきました。

山形県指定文化財でもある美しい銀杏の木です。

歴史を物語る熊野神社(熊野大社)の大銀杏

熊野神社(熊野大社)の大銀杏の紅葉

この古い大樹は、道標の役割があります。左右に道が分かれていて、右に行くと羽山修験があった宮沢城跡長谷観音への山道、左に行くと熊野大社への参道です。昔から日本人は事あると記念樹を植樹して歴史の道標にしてきました。

根周り7.7メートル、高さ30メートル。
熊野大社のシンボルにもなっているこの大銀杏もまた同じく、東北の巨大な歴史を物語っています。

源頼朝義経の先祖にあたる源義家(八幡太郎義家)が、後三年の役のあと、家臣である鎌倉権五郎景政に命じて植えさせたという伝説です。

源義家がらみの伝説は、この熊野大社の他にも赤湯温泉や長井市、米沢市など山形県置賜地方にはたくさん残っています。そして、私が調べているドラゴンロードには源氏の伝説が見え隠れしています。ここもまた、密教・修験の名残りなのです。

遠くから見ても、近くから見ても堂々としていて美しい銀杏の木です。明治時代以降で途絶えた東北の信仰が人々から忘れ去られてもなお、その姿は名残りを伝えようとしています。

歴史をつむぐ Icho cafe

熊野大社のIcho cafe

熊野神社の大銀杏の下には、参拝に来られる方が集まってる Icho cafe です。

近年まであった〝いちょう売店〟の跡をリノベーションし、その歴史と名前を引き継いだカフェです。近年、補助金などを活用して古いものをリフォームしたり新しく作る町づくりが多い中、ここは、独自の歴史を大切に、新しい提案をしたい町の有志らが手がけました。

古いものを活かすことは大切ですが、その“歴史の意思を受け継いで興すこと”はもっと尊いことです。

一度無くなってしまえば、日本の歴史の中の自分たちの町が、どこにでもあるモブシティのモブキャラに歴史が書き換わってしまいます。明治維新後の日本や戦後の日本の歴史のように。地元愛や愛着とは、歴史に誇りを持つことから生まれるものなのです。

そんな町民の想いが沸かせているコーヒーに、歴史の色を浮かべて香味を楽しむのも一興です。

この Icho cafe には、若い女性を中心に若者たちも多く集まってきています。
シニア世代だけでなく、若者たちもまた歴史の中に身を置ける場を欲しているのです。

古い南陽市の歴史を伝える功績と信仰の跡

安部右馬之助碑

熊野神社の大銀杏から熊野大社の参道へ入って突き当たりには、堂々とした安部右馬之助碑があります。功績を称えた大きな石碑です。絡まっている蔦も色づいていました。

安部右馬之助は、江戸時代初期に代官で北条郷(現、南陽市)の礎になった偉人です。この人物については、以前書いた記事でもご紹介しています。→お宝発見!美しい色彩で描かれた古文書!山形県南陽市の熊野大社周辺絵図を拝見…修験道調査

また、参道の石段の脇にある摂社や石碑を興味を持って参拝すると、この地に元々あった信仰にも気がつけます。

飯豊山信仰を伝える古峯神社、湯殿山神社と月山神社があります。また、講の名が削り取られた湯殿山供養塔もあります。この地に山岳信仰があった証拠です。

熊野大社に封印された歴史

熊野大社拝殿に掘られた三匹の龍

熊野大社には三匹の兎伝説がありますが、拝殿には三匹の龍がいます。昔、日本の国教が一つだった神仏習合の名残です。
大同元年(806)に平城天皇の勅命により再建された熊野大社は、熊野修験の霊場として栄えた古代から中世にかけて作られた山形県置賜地方の町づくりデザインの一つだったのです。

私は、この町づくりデザインをドラゴンロードと呼んでいます。
そこには、こういった龍が隠されていて、その忘れ去られた参詣道は今でもその史跡を残し続けています。

せっかくなので、秋の観光シーズンの忙しいところ、熊野考古館のシャッターをツテを使って開けてもらいました。
ここには、通常は人目につかないように封印されている熊野大社の歴史的な貴重な品々が展示保存されています。写真撮影はできませんでしたが、神仏習合、天台宗、真言宗、修験に関わる歴史的な資料を見ることができました。拝察すれば、山形県置賜地方を治めた伊達家や米沢藩上杉家にも関わる歴史も見えました。

これらを次の100年につなぐ意思があれば、私の調査内容が生きてくることでしょう。

同じくツテを使って、熊野大社の権禰宜に私の古武術奉納の許可を頂けたとのことでしたので、近々、九鬼神流棒術のカタを神楽殿で奉納演武させてもらおうと思います。伊勢・熊野から始まって伊達家の棒術と合併されて今に残る古武術です。

今回、熊野神社の大銀杏の紅葉を見て、私がこれまでやってきたことが色々と紅葉してきているのを感じました。

熊野大社の神楽殿

修験道ドラゴンロードについてはこちら

ドラゴンロード
米沢藩・小山道場では、米沢藩から伸びていた湯殿山道中と飯豊山道中の調査を行っています。山形県置賜地方の修験道デザインを知っていただき、新たな魅力や誇りを感じていただけます。講師のガイドで史跡や古道、自然の中を歩きながら楽しく地域探求してみませんか。