山形県でインバウンドに成功している修験道!いざ、外国人たちと總本山甑嶽山観音寺甑嶽修験へ
こんにちは。米沢藩・小山道場講師の小山です。
ちょうど1ヶ月前に甑嶽修験に参加してきました。
山形県の東根市と村山市にまたがる甑岳(こしきだけ)は、奈良時代に藤原氏が東北の鬼門として開山した山です。ここに位置する總本山甑嶽山観音寺の甑嶽修験道は、山形県でも珍しく外国人に門戸を開いています。古流でありながら、日本の神仏習合の新たな時代を先導する寺院の一つです。この寺院は、外国人衆徒のインバウンドに成功しています。
宗家(住職)は甑岳 聖道さんで、海外にも弟子を持ち、その山々で修験ルートを作り出しています。
昨年、共通の知人を介して出会ったことをきっかけで、私も今年の總本山甑嶽山観音寺の甑嶽修験に参加しました。参加の理由は、甑岳さんが修験道の本質を保っていると感じたからです。また、かつて山形県に存在していた修験道参詣道「ドラゴンロード」を調査する上で、実践している者しか知り得ない情報を教えてもらい、私の活動に協力してもらいたかったのです。
つまり、「甑岳聖道さんとは相性が良さそうだ」と直感しました。
さらに、この甑岳は私が調査している「ドラゴンロード」の一つで、天童市と東根市神町を囲むようにある「ケフェウス座(仮和名:胎内座)に位置しています。現在の山形県に、祖先である藤原氏たちがこのようなポイントを結んで修験道を作り出したと考えられます。
この地図から地名を見ていくと納得がいく地名が残っていることが分かります。
天童市は天の童で天子のことです。東根市神町は神通で陣痛のことでしょう。神が胎内に子を宿していて今にも生まれることを表しているようです。
修験の目的とは〝生まれ変わる〟ことなのです。得度すれば現在でも名前まで変わります。
また、興味深いのがこの地域の方々に霊山とされている葉山と甑岳を結んでいることです。昔々の山形県は修験の聖地だったのだと思います。東側には、宮城県との県境に「カシオペア座(和名:やまがた座)」です。蔵王国定公園を含みます。おそらく、ここにも昔は修験道があったでしょう。やまがた座は、山形県の名称の由来になったと推測しています。
約30人の外国人たちと2泊3日の山籠り
インバウンド=日本を経験してもらう意義
ヨーロッパ、アメリカ、中国など様々な国から参加者が集まっています。約30人の外国人と一緒に、霊山・甑岳で数日間の山籠り断食修行を行います。修行中は写真撮影が禁止されていますが、プロのカメラマンが撮影し、その写真は宗家がFacebookで公開してくれました。今、インバウンドで訪れる外国人たちは、日本の深い部分を学び、その楽しみ方を理解しているのです。
山形県の資産と強みは、何と言っても山です。それに結びついた生きた文化や信仰を経験し、持ち帰りたいと考えているのです。
インバウンドは、本物にこそ価値があります。
彼らと共に山を登り、電気のない山小屋で夜を過ごしました。言葉は通じなくても、親しくなることができました。もちろん、言葉以外にも文化や信仰心の深さに違いがあり、それが壁となることもありますが、それすらも互いに受け入れていくことが修行の第一歩です。これを面白いと思うかどうかは個人差があります。そこで経験する感覚や感情の学びは人それぞれです。
水行(滝行)は、行を積んだ徳の高い人には寒く感じないそうですが、至らぬ僕には日が落ちた山の湧き水はとても冷たく寒かったです。脳天から注がれた清らかな水は、山形県の母なる川・最上川に流れ出て、今頃は日本海の塩水の一部になっているかもしれません。
修行中に蝉の声を聞きました。ひぐらしも鳴いていました。
生まれて初めて春に蝉がいることを知りました。春蝉と言うらしいです。その声は夏蝉の主張とは異なり、鳥たちの声と調和しているようでした。そして、ひぐらしの声と共に命を全うしていきました。
甑嶽修験は、登山だけでは分からないことを肌で教えてくれました。
ちょうど満月で、月に兎(ウサギ)が見えました。もう少しで蟾蜍(ヒキガエル)も見えそうでした。これは、私が古流の禅法を修験道と古武道から眼の使い方を導き出した方法で見ることができます。開眼した人が満月を見ると、真っ白な綺麗な兎と飛び上がる蟾蜍に別れるのです。おそらく、極めれば仏教で3000年に一度咲くと言われている優曇華の花も月に咲きます。
日本には、古来から月に兎がいるという言い伝えがあります。しかし、現代人はそれを昔の人の空想上の伝説と思っています。それは、残念ですが日本人が本来の身体の使い方を忘れたから見れなくなったのです。真の歴史を知って、身体を鍛えれば鍛えるほど伝説は伝説でないことが分かります。今でもそれはちゃんと見ることができるのです。
満月がとても綺麗でした。山の上で過ごす夜はとても寒かったですが(笑)
天台宗大阿闍梨とも話すことができました。
祖先たちがどんな想いで山を登り儀式をしていたのか、少し感じることができました。
山形県の真実を知る上で貴重な経験でした。
甑岳さんに水行中の写真をいただきました。facebookに公開したら見た方々がタイトルをつけてくれました。『満天の星』が良いです。確かに、脳天から浴びた水が散って宇宙のように見えます。仏教の教えは天に結びついているものです。真髄を表すようなタイトルで気に入りました。実際にはとても寒くて、この時、私は震えていました。
1000年以上も先人たちが歩んだ道「ドラゴンロード」を調査するのは簡単ではありません。文献ばかり漁っている現代の歴史学者達や学校の先生達にも、ぜひ体験してもらいたいものです。
参加して多くの気づきがありましたが、「せっかく来たのだから、自分の説を検証する上でもっともっと経験させてほしい」という思いもありました。でも、今の私にはこれがちょうど良かったのかもしれません。修験に精通していた祖先達からのお告げなんだと思いました。
山を登ったり降りたりしている時、一緒に参加している外国人に「ディズニーランドのアトラクションみたいだね!」と話しかけたら、「私はロード・オブ・ザ・リングみたいだと思う」と返答されました。確かに、安全が担保されているテーマパークよりも、危険が伴うアドベンチャーの方が適切です。彼らが適切な体感で楽しんでいたのが印象的でした。
来年、私は行者ではなく、甑嶽修験の公式映像カメラマンとして参加させていただけることになりました。撮影することを認めてもらえたということでしょう。修行中にビデオカメラが入るのは初めてです。甑嶽修験ご興味のある方は、以下のFacebookにアクセスしてみてください。
さて、これから日本の地方人口は待ったなしで激減していきます。
人がいなくなれば色んなものが衰退します。もちろん、私たちの仕事もです。
インバウンド。
それは、そのために新しいものを作り出すのではなく、日本がクローズドからオープンに変化して、人が生きるために新しい視点や価値観を生み出すことこそが本質です。今も昔も変わらずに、
長きに渡って人が経験できる本物こそが、未来に受け継がれていくのです。
断食後、町民の皆さんに振舞っていただいたおにぎりと、きのこ汁の味は最高でした!
あんなにうまい米を食べたのは生まれて初めてでした。
そして、甑岳さんお招きいただきありがとうございました。
ともに過ごしたお弟子さんや外国人衆徒の方々、また来年会いましょう!!
甑嶽修験後、一度位を授与いただきました。外国人に分かりやすいように英語でも書かれているのがとても良いです。せっかくなので、大阿闍梨による結縁灌頂にも参加させていただきました。私は大日如来と結ばれたとのことです。でも、それは参加する前からそうなると感じていました。
案の定、このせいでしょう。仏様が「印」を結んでいるように、この世には「韻」が存在しているのです。
修験道、それはまさに「イン・バウンド」なのです。
最後まで記事をお読みいただいてありがとうございます。仕事や講演の相談もお気軽にどうぞ。米沢藩・小山道場講師。江戸幕府から米沢藩士になった藤原氏の末裔。【古武道流派】九鬼神流棒術(紀州熊野)/甲源一刀流剣術(甲斐)/浅山一伝流体術(会津)【所属団体役職】置賜民俗学会(会員)/米沢商工会議所(議員)【職業】HanaCinema株式会社/映像・ウェブクリエイティブディレクター。